瓔珞迷<エイラク・ミイ>

瓔珞<エイラク>ファンの自己満足メモです。

『瓔珞』第九話・太監の凶行

要点・見どころ

1.加速する後宮の派閥争い 2.瓔珞と傅恒の危ういやりとり

 

あらすじ

前半・・・瓔珞は愉貴人へお見舞いの品を届けるため永和宮に向かったが、人の気配がなく様子がおかしい。怪しんでいると宮殿の中からうめき声が聞こえ、慌てて中へ入ると、ひとりの太監が愉貴人の首を絞めて殺害しようとしていた。瓔珞は死に物狂いで太監を気絶させ、助けを呼ぼうと外に飛び出すと、今度は高貴妃に出くわす。高貴妃は瓔珞までも手にかけようとした。仕方なく宮殿に立てこもり、助けを呼ぶために窓から煙を出して火事を装い、駆けつけた傅恒ら侍衛によってなんとか救出された。

後半・・・傅恒らが太監を追及すると、彼は皇后が黒幕だと供述して自害してしまう。高貴妃に追い詰められる皇后だったが、瓔珞は高貴妃の主張にある矛盾点を述べて皇后の無実を証明した。事がいったん落ち着き、瓔珞のもとに傅恒が傷薬を届けに来た。会話をするなかで傅恒は初めて笑顔を見せ、ふたりの距離が近づいたように思えた。すかさず瓔珞は姉の名前を出し、傅恒の反応を探った。瓔珞は変わらず傅恒を姉の仇と疑い、一方の傅恒も緩んだ気を引き締め、再び瓔珞を警戒するのだった。

 

登場人物

魏瓔珞
 明玉から押し付けられ、皇后の代わりに永和宮にお見舞いの品を届けに行ったところ、愉貴人が襲われている場面に出くわす。とっさに花瓶やかんざしなどを使って太監を攻撃して愉貴人を救ったが、今度は高貴妃に狙われる。確実に人を集めるために火事を装い、そのおかげで駆けつけた傅恒たちに救われる。そして、高貴妃の謀略から皇后を守るため、なぜ長春宮の女官である自分が殺害を妨害したのかなど、矛盾点をあげて無実を証明した。
 傷薬を届けに来てくれた傅恒に、「自分は虎の威を借る狐だ」と冗談を言って距離を縮める。しかし、姉の敵討ちしか頭にない瓔珞はこれは好機とばかりに、傅恒に阿満を知っているか尋ねる。彼は知らないと答えたが、その表情を見てやはり知っていると感じたようだ。
 傅恒の前では無力な普通の女官を装っていたが、太監に対して容赦なく傷を負わせており、そこから思いがけず激しい気性を悟られてしまった。

 

嫻妃
 本名は輝発那拉・淑慎Shushen。厳格な父親が自らへの戒めの意味をこめて名付け、その名の通りに慎ましく生きるようにと育てられた。
 母から罪を犯した弟を救うように請われたが、尊敬する父が了承していないことがわかると断り、怒らせてしまった。それでも考えを変えず、家族にその決心を伝えようと手紙をしたためるが、苦悩の涙で文字をにじませてしまう。そこへやってきた純妃に「皇后なら弟を救うことができる」と助言されるが、派閥争いに加わりたくないという思いで拒否した。

 

純妃
 嫻妃の書き損じた手紙を読んで事情を察し、直接乾隆帝に訴えるのではなく、まず皇后に相談すれば“私情を優先した妃嬪”という汚名を着ることなく、弟を救えるだろうとアドバイスした。これをきっかけに嫻妃を皇后側に引き入れるつもりだったが拒否され、その頑なな態度に「後悔しないように」と警告する。

 

明玉
 体調の悪い皇后に代わり、愉貴人にお見舞いの人参を届けるように命じられる。しかし、(今でも愉貴人を助けても得はないと軽んじているから?)その役目を瓔珞に押し付けた。

 

爾晴
 皇后の体調を心配し、愉貴人のお見舞いに行こうとするのを止め、代わりに明玉を遣わしてはどうかと提案した。その後、やはり愉貴人が心配で自ら永和宮に向かう皇后に付き添い、芝蘭が瓔珞を平手打ちしようとしたのを阻止した。

 

富察皇后
 自身も体調が悪い中、怡嬪の死をきっかけに引きこもっている愉貴人の心配をする。信頼する張院判から様子を聞き、お見舞いに行こうとしたが止められ、明玉に代理を命じた。しかし、怡嬪の忌日であるため愉貴人が思いつめてしまわないか心配になり、結局自らも永和宮に向かう。そこで太監が自分の命令で愉貴人を殺害しようとしたと証言しているのを聞き、問い詰めるが真実を吐かせる前に自害されてしまう。しかし瓔珞の冷静な状況分析によって救われ、彼女の能力を再度評価した。
 この事件を公にしてしまうと、愉貴人がしきたりを破ったことまで露見してしまうため、愉貴人自身はもちろん、生まれてくるお腹の子までもが不遇な目にあわないよう守るため、乾隆帝に報告しないことに決めた。

 

高貴妃
 愉貴人がしきたりに反して密かに怡嬪の供養をすることを知り、当初はその罪を暴いて陥れようと考えたが、嘉嬪から暗殺するように助言され実行することにした。侍女の芝蘭に計画を一任し、愉貴人が人払いをした隙を狙って太監に扼殺させ、怡嬪の後を追って首を吊ったように見せかけようとした。その愉貴人が亡くなる瞬間を見届けようと、大勢の太監を護衛に引き連れて永和宮を訪れたが、瓔珞に邪魔されてしまう。実行犯の太監に皇后の命令だと証言させ、皇后に罪を着せようとしたが、瓔珞に矛盾点を指摘され、仕方なく誤解のために皇后を中傷したと謝罪した。
 暗殺に関しては罪に問われることはなかったが、単に失敗したどころか皇后に跪く羽目になった怒りを芝蘭にぶつける。嘉嬪になだめられても怒りは収まらなかったが、兄の高恒から犬を贈られると、その可愛さにすっかり怒りを忘れて雪球Xueqiuと名付けた。
 乾隆帝高家を重用し始めたことに疑問を持つが、嘉嬪のお世辞に気を良くし、それ以上は考えなかった。

 

芝蘭
 高貴妃に愉貴人の暗殺計画を一任されていたが、瓔珞に邪魔されてしまう。皇后を犯人に仕立て上げるつもりだったのではと追及されると、とっさに「誤解してしまっただけだ」と答えたが、それが元で高貴妃は皇后に不敬な行いをしたとして謝罪する羽目になった。
 怒りを爆発させる高貴妃の前になすすべなく、嘉嬪にとりなしをお願いした。

 

嘉嬪
 高貴妃に「災いは元から断つべし」と、愉貴人を殺害するように勧めた。事件が失敗に終わって、激怒しながら儲秀宮に戻ってきた高貴妃をなんとかなだめようとする。高家が重用されていることを陛下からの寵愛だと羨ましがり、ご機嫌を取った。

 

愉貴人
 姉のように慕っていた怡嬪の死後、ショックのあまり体調不良に陥っている。精神的な原因のため、張院判の治療もあまり効果がない。宮中での故人の供養は禁止されているが、怡嬪の四十九日の供養をするため人払いをしたところ、高貴妃の手下の太監に襲われてしまった。またも大きなショックを受け錯乱し、治療を受けている。
 字幕が「貴人 愉氏」となっていたが愉は姓ではなく、本名は珂里葉特。

 

富察傅恒
 火事騒ぎを聞きつけ、永和宮に駆けつける。そこで殺されそうになっている瓔珞を救い、状況を説明させた。太監に黒幕を明かすように迫り、皇后だという証言は一切信じず、さらに追及しようとしたが自害されてしまう。
 高貴妃に立ち向かって姉を救ってくれた瓔珞に恩を感じたのか、傷薬を届ける。そこであまりに大胆で潔い彼女の考えを聞き、思わず頬を緩めた。それを指摘されて不謹慎だと叱るが、思いがけず瓔珞の身の上を知ることになり、言葉に詰まる。瓔珞から阿満を知らないかと問われると、かすかに顔を強張らせた。
 瓔珞への警戒を少し緩めたはずが、海蘭察から瓔珞が残虐なまでに太監を痛めつけていたことを聞かされ、その本性を怪しむ。

 

海蘭察
 傅恒とともに永和宮に駆けつけた。目を覚ました太監を力づくで脅して真実を吐かそうとしたが、自害されてしまう。その遺体を共同墓地に葬る際、あまりに傷だらけだったことを傅恒に話す。雪球の姿を見かけ、人間を引き連れて歩いている様子に思わず苦笑した。

 

張女官
 瓔珞の目的を知る、唯一の理解者。無茶をして傷を負った瓔珞に呆れながらも、薬を塗ってあげた。そのときに傅恒の話を聞き、いまだに姉の仇を探していることに驚いた。


メモ

“温にして恵 淑く其の身を慎む”

 中国最古の詩集『詩経』に収録された詩「燕燕」の一節。终温且惠,淑慎其身。もう二度と会えない女性(嫁ぐ女性?)を巣立ちを迎えた燕に重ね、別れの情景を詩にしたもの。女性は「穏やか(=温)で素直(=惠)でありなさい、善良(=淑)な行いをし、身を慎みなさい」という励ましの言葉を胸に旅立った。古代女性の美徳、理想像がわかる。

 

常寿

 嫻妃の弟。輝発那垃家の一人息子だが、甘やかされて育てられ、遊び呆けていたため父親に良い職を用意してもらえなかった。

 

情志

 東洋医学でいう、外からの刺激による心の反応のこと。東洋医学では心と体は深く結びついていると考えられ、特に七情(怒・喜・思(考えすぎ)・憂・悲・恐・驚)という七つの感情変化があまりに突発的だったり、過激だったりしたとき、病の原因になると考えられた。

 

人参

 オタネニンジン朝鮮人参?)のこと。栽培は難しいが、古くから薬として珍重されてきた。自律神経を整え、ストレスによる胃腸の不調や食欲不振の改善、滋養強壮に効くとされる。

 

楚の荘王

 紀元前、春秋戦国時代の楚の国の王。楚の歴代の王の中でも最高の名君とされ、多くの故事の由来となった。純妃は嫻妃の文を読み、荘王が法を守ろうとしない太子に「臣下が法を守らねば皆が真似をし、国王が威厳を失ってしまう」と説教した逸話を引用したと見抜いた。

 

那爾布

 嫻妃の父親。満州族は基本的に姓を使用しない。勤勉で善良な人柄だが、自分に厳しく慎ましやかを良しとするため出世もせず、20年も佐領を勤める。嫻妃が嫁ぐ前、「何があっても正しくありなさい」と教える。嫻妃もまたそんな父を尊敬し、教えを守ろうとしている。

 

忌日

 満州族は民族独特の宗教を信仰していたが、清国を建国すると漢民族の伝統的な宗教の影響を受け入れ、乾隆帝チベット仏教を信仰した。忌日に関しても、おそらく紫禁城では仏教に則った法要が行われたのでは(愉貴人は蒙古族だけど)。しかし、それらの法要は皇帝が仕切るというのがしきたりで、それ以外の者が勝手に執り行うのは皇帝と皇太后への呪いの行為とされているらしい。

 

格闘技

 中国武術の歴史は古く、紀元前の漢の時代に戦のための教練として生まれ、そこから娯楽や健康法として発展した。太極拳少林拳など拳法が有名だが、もともとは戦のために生まれたため武器を使う武術が多い。

 

御茶膳房

 宮中に住む妃嬪や皇族の飲食を用意する機関。内務府の管轄下で、御茶膳房のさらに下に茶房や肉房などがある。もともとは茶房(飲み物)と膳房(食べ物)は別々だったが、乾隆帝の時代に合併して御茶膳房となった。愉貴人は侍女の芳草に、口の中が苦いから汁物を作ってもらってきてとお遣いを頼み、その隙に怡嬪の四十九日法要を密かに執り行おうとした。

 

小路子

 太監の名前? 高貴妃によって永和宮に送り込まれ、愉貴人が人払いをした隙を狙って殺害しようとした。もし罪を問われたら皇后に命じられたと証言するように言われ?、追及を逃れられないとわかると歯に仕込んだ毒を飲んで自害した。

 

高貴妃の父・兄

 父が総管内務府大臣(後宮の諸々を司る内務府の長・呉総管のさらに上)兼江南河道総督(治水や河川の管理をする高級官職)となり、兄も出世した。張廷玉と鄂爾泰の派閥争いを疎んでいるはずの乾隆帝が、なぜ鄂爾泰と近しい高家の父親や兄を出世させたか、高貴妃も疑問に思った。傅恒によれば、それは鄂爾泰と仲たがいさせるための離間の計だという。おそらく乾隆帝は、高家を重用して高貴妃が勢いづいても、今の皇后ならば抑えつけられると思ったのでは。このために皇后を立ち直らせたのでは。

 

 狆と訳されていたが、狆は日本原産なのでペキニーズ(京巴狗・北京犬)では?似ているけど違う犬種。中国歴代の宮廷で門外不出の愛玩犬として、大切に飼育されていた。宮中では高級妃嬪の飼う犬の方が太監や女官よりも位が高く、前を歩くことさえ許されない。