瓔珞迷<エイラク・ミイ>

瓔珞<エイラク>ファンの自己満足メモです。

『瓔珞』第29話・奇妙な友情

要点・見どころ

1.袁春望の素性 2.嫻妃の暗躍

 

あらすじ

前半・・・袁春望はその美貌が災いして、男色の張官事に狙われていた。瓔珞は彼が警戒して残飯や雨水で飢えをしのいでいることを知り、良かれと思って饅頭を用意していた。しかし、張官事はその饅頭に薬を仕込み、倒れた袁春望に襲い掛かる。瓔珞はとっさに張官事を殴って気絶させ助けた。これを機に袁春望はすっかり心を許し、傅恒を諦めて自分と恋人になるよう唆す。瓔珞はもちろん拒否したが、どういうわけか袁春望とは気が合った。似た者同士、支え合って生きていこうと同盟を結ぶ。

後半・・・嫻妃は御花園で高貴妃を待ち伏せし、皇后が皇子を産めばもはやその地位は揺るぎないものになるだろうと煽った。高貴妃は激怒し、すぐさま皇后を害す方法を探す。そんな折、皇太后が宴を開くことになり、つわりで体調が悪い皇后も仕方なく参加することになった。しかし、その宴で振る舞われた鹿の血豆腐の臭いが、異常なほど強烈だった。皇后が吐き気を催してしまい、慌てて下げようとした女官が床に血豆腐をこぼしてしまう。するとどこからともなく、不気味な羽音が聞こえてきて……。


登場人物

魏瓔珞
 軽率に貞操を捧げることで傅恒から嫌われようとしたが、いざ顔を寄せられると奥手な様子を見せた。気持ちの整理がつくまで待つと言われ、思わず放心しつつも改めて彼に惚れ直した様子。
 肥桶に炭や砂を入れ、臭いや汚水を吸収させて洗うのが楽になるよう工夫した。それを張官事に褒められ、もっと楽な仕事に変えてもらえるはずだったが、裏で下された乾隆帝の命令のせいで逆に仕事を増やされてしまった。また草取りの最中、たまたま皇后の輿が通りかかると、思わず跪くのも忘れて見つめてしまい、鞭で打たれた。それでも挫けた様子はない。
 袁春望が張官事を警戒して食事の場に来ず、雨水や残飯でしのいでいることを知り、饅頭を分けてあげた。しかしその饅頭が原因で襲われてしまうと、張官事を殴って助けた。証拠隠滅しなくてはという袁春望に従い、気絶した張官事を糞尿を運ぶ荷車に入れ、ひそかに城外に追い出した。それを機に袁春望が素性を露わにして馴れ馴れしくなると、口喧嘩をしつつも仲良くなった。傅恒も本当は恨んでいるかもしれないぞと言われると動揺したが、彼の前で肌着になったのを見られていたことを悟り怒った。
 手が荒れているのを心配してくれ、代わりに肥桶を洗ってくれた彼に心を動かしつつ、恋人になれと言われると「蛇が二匹いても温め合えない」と拒否した。しかし、彼が紫禁城で生き抜くために支え合っていこうと提案すると、それに乗って“同盟”を結んだ。
 偶然、宮中で泣いている少年を見つけ、思わず声をかけた。高貴妃に無理やり危険な芸を仕込まれていることを知ると憤り、助けようとしたが袁春望に止められてしまう。

 

袁春望
 顔立ちが良いために張官事から気に入られていたが、その気はないと頑なに拒んでいた。警戒して一緒に食事もとらず、側溝に捨てられた残飯や雨水でしのいでいたが、心配した瓔珞から饅頭を渡されると空腹に耐えきれず勢いよく食べた。しかしそれは罠で、倒れて襲われかけたところ瓔珞に助けてもらった。証拠隠滅しなくてはふたりとも罪に問われてしまうとして、協力して張官事を荷車に押し込めた。
 すっかり瓔珞に気を許し、馴れ馴れしく寄りかかったり挑発するような軽口を言った。女子に対して失礼だと瓔珞が怒ると、卑しい生まれだから礼儀など知らないのだと反論。そして、貴い身分の傅恒ではなく同じ奴婢の自分と恋人になれと勧めた。嫉妬しているのだろうと本心を言い当てられると、まるで自分たちは鏡のように似た者同士だと驚いた。兄代わりとなって守るから、ふたりで支え合っていこうと提案し、“同盟”を結びついでに再度恋人になろうと誘った。
 宮中で泣いている少年を見かけると、侍衛に見つかれば殺されるぞと脅した。事情を聞いて助けようとする瓔珞に対し、高位に昇って自分で自分の身が守れるまで他人を助けようとしない方が良いと警告した。

 

張官事
 辛者庫を仕切る太監。瓔珞の働きぶりを褒め楽な仕事を与えようとしたが、乾隆帝からの命令を聞くと、手のひらを返して水運びの仕事を増やした。
 顔の良い袁春望がタイプなようで、後ろから突然抱きつくなどセクハラをしていた。頑なに拒まれても諦めず、瓔珞が彼のためにとっておいた饅頭に薬を仕込み、朦朧としたところを襲い掛かった。しかし瓔珞に殴られて気絶し、そのまま糞尿として城外に出された。

 

乾隆帝
 瓔珞が苦役に耐えられず泣いたかどうか、李玉に尋ねた。泣きもせず哀願もしていないことを知ると、さらに仕事を増やして屈服させようとした。
 仲永檀と周学健への密命が漏れていた件や、高斌の治水工事の件について、傅恒に相談した。彼が聡明な回答をすると、女を見る目もそうだったら良かったと嫌味を言った。傅恒が反論すると、必ず瓔珞の本性を暴くと息巻いた。
 皇太后が宴を開くことになり、多忙のため皇后に対応するよう命じた。

 

傅恒
 貞操を捧げようと衣を脱いだ瓔珞に衣を正させ、気持ちの整理がつくまでいつまでも待つと告げた。額に口づけると、意外に奥手な彼女の様子に思わず微笑んだ。後日、そのときのことを思い出してにやついていると、海蘭察から心配ではないのかと訝しがられた。いっそ辛者庫の方が安全だろうと考えていたが、汚い仕事をさせられて恨まれないかと言われると動揺した。
 乾隆帝から政について相談され、的確に答えた。瓔珞を見初めたことに嫌味を言われるも、自分の目は間違っていないと反抗した。

 

高貴妃
 頬紅をつくるため、女官たちを引き連れて御花園で花を摘んでいた。嫻妃に出くわし、皇后のために朝露を採取しているのを見てからかった。しかし、皇后が無事に出産してお子が皇太子になればそのような大きな顔もできなくなると煽られ、怒ってすぐさま皇后を害する策を舒貴人と相談することにした。
 兄の高恒が連れてきた村人に危険な芸を強制的に教え込ませ、皇太后の誕生日に披露しようとしている。

 

嫻妃
 高貴妃が御花園に来ることを知っていて、皇后のために朝露を集めている姿をわざと見せた。いつものような慎ましい態度ではなく、厳しい口調で不遜な高貴妃に反論し、皇后がお子を産めば高貴妃の栄華は終わるだろうと焦らせた。どうやらそれはなにか考えがあってのことのようだ。

 

富察皇后
 たまたま草取りをする瓔珞の横を通り、鞭打たれる彼女を目撃するが目を背けるでもなく声をかけるでもなく(信頼?)、通り過ぎた。
 乾隆帝の命令もあり、体調不良(つわり?)だったが皇太后の開く宴へ参加した。皇太后から心配されると大丈夫だと言ったが、負担を減らすため純妃と嫻妃に後宮を任せたいと申し出た。
 宴で出された鹿の血豆腐を口にしようとしたところ、吐き気を催してしまう。

 

明玉
 体調不良なのに宴に参加しようとする皇后に、侍医が安静にするように言っているのだから、行かなくても良いのではと話した。しかしどうしても行く必要があるとわかると宴に同行し、菊花酒を勧めてくる高貴妃に「体を冷やすから飲まない」と断った。

 

爾晴
 宴に行く必要はないという明玉に、欠席すれば高貴妃に非難する口実を与えてしまうと言った。しかし皇后を心配し、せめて侍医を同行させてはと勧めた。

 

太后
 宴に参加した皇后に、身重なのだから強がらず養生するように諭した。皇后が養生のためにも純妃と嫻妃に後宮を任せたいと提案すると、すんなり承諾した。皇后のために体を温める鹿肉の火鍋を用意したが、血豆腐は流産の可能性があると知ると女官を叱って下げさせた。

 

純妃
 血豆腐を食べようとして吐き気を催した皇后に、流産を引き起こす可能性があるから食べてはいけないと注意した。

 

舒貴人
 宴には参加しなかったが、なにか企てた策略があるのかその様子を見届けようと遠巻きに眺めていた。

 


メモ

沈香
 沈丁花。お香として有名。

 

腰牌
 宮廷への出入り許可証。太監がこれを身につけずに宮中から出るのは大罪らしい。

 

永巷 yong xiang
 紀元前、漢の宣帝の時代、犯罪を犯した女官や妃嬪たちを収容した宮中の監獄。袁春望はおぞましい場所の例えとして用いた。

 

アザミ
 キク科の棘が特徴的な植物。葉や根は乾燥させて漢方薬として、解毒や強壮剤として使われる。止血や化膿性炎症を抑える作用もあるらしい。

 

朝露
 古代中国では、朝露や空から降ってきた雨や雪など、地についていない水を无根水(無根水)と呼び、もっとも清らかな水として薬を飲むときや薬そのものとして飲まれていた。また、それらの水は土中の岩石などの成分が溶けだしていないので、お茶を淹れるときに使うと茶葉本来の味を楽しめるとされる。

 

四妃
 唐の時代、貴妃・淑妃・徳妃・賢妃の4人の妃を特に“四妃”と呼び、皇后の次の位(細かく言えば四妃の中にも順位がある)だった。また、黄帝や帝喾(黄帝のひ孫)の4人の妃のことを指すこともあるらしい。清の時代でも基本的に“妃”の定員は4人だったので、「特に位の高い側室」という意味で嫻妃は言った?

 

酸梅湯
 中国の伝統的な飲み物。燻製した梅を使った甘酸っぱいジュースで、夏によく飲まれる。においが独特だけど、それが癖になる(個人の感想です)。

 

仲永檀
 鄂爾泰派の中核を担う役人。史実では乾隆7年、張廷玉派の張照という人物に、密命の内容を鄂容安に漏らしたことを知られたため、ふたりで相談して張照を弾劾した。しかしこの行いは、徒党を組むことを嫌う乾隆帝に「私益のために鄂容安と結託した」と判断され、逮捕されてのちに獄中で病死した。

 

周学健
 刑部左侍郎や兵部右侍郎などを歴任した役人。

 

鄂容安
 鄂爾泰の長子。乾隆元年、南书房行走という皇帝の秘書となり、その後、兵部侍郎から河南巡撫になった。仲永檀から密命の内容を伝え聞いたという。

 

親王
 爵位のひとつ。清の太宗・ホンタイジの第五子・碩塞が始祖。

 

両江総督
 地方長官の官職のひとつ。安徽省江蘇省江西省の軍政と民政を統括した。清代初期は安徽省江蘇省は「江南省」というひとつの省だったので、江南省と江西省のふたつの“江”の総督という意味。尹継善という人物は、乾隆帝の時代に何度もこの官職に就いた。

 

江南総河
 江南河道総督(南河総督)? 清代の高級官職のひとつ。江蘇省の川の土木工事などの責任者。白鐘山は乾隆7年にこの総督だった。

 

洪沢湖
 江蘇省の北西部にある湖。淮河中流に位置し、淡水湖では中国国内で第四位の面積がある。

 

淮州
 かつて河南省にあった州。

 

徐州
 江蘇省にある州。三国演義にもよく登場する。劉備から留守を預かっていた張飛が酒に酔って呂布に奪われた、とか(関係ない)。

 

海州
 江蘇省にかつてあった州。

 

鳳州
 陝西省にある県の古称。

 

穎州
 かつて安徽省にあった州。

 

泗州
 かつて安徽省から江蘇省にまたがって存在していた州。

 

御景亭
 御花園にある建物。築山の頂上にあり、紫禁城の景色を眺めることができる。高い場所へのぼる風習がある重陽節のとき、皇帝や妃嬪たちがここで宴を開いた。

 

重陽
 旧暦の9月9日の節句。陰陽思想において9という数字は“陽”で、それが重なる9月9日は陽の気が強すぎるため厄払いをしたのが始まりで、のちに祝い事に変化していった。重陽節の由来となった伝承で、高い場所へ登って菊花酒を飲んで災難から逃れたというというお話があり、そこから人々は登山を楽しんだり、長寿を祈って菊花酒を飲む風習が生まれた。

 

万紫千紅
 「たくさんの色の花が咲いている様子」という意味の四字熟語。『瓔珞』では、高貴妃が村人に無理やり教え込もうとした芸の名前。どうやら、中国の河北省に伝わる伝統芸能の“打树花”のことらしい。溶かした鉄を撒いて、飛び散った火花の美しさを楽しむ。

 

天津
 河北省にある地名。

 

総兵
 総兵官。地方の軍を総轄した武官のこと。

 

高恒
 高貴妃の兄。天津総兵で、任務地で見た“万紫千紅”を妹の高貴妃の役に立てようと、村人を強制的に宮中に連れてきて芸を仕込ませた。

 

菊花酒
 菊の花や茎、葉っぱをキビと米に混ぜて醸造したお酒。重陽節のときに飲む。日本では菊の花を浸した日本酒のことをいう。

 

当帰
 セリ科の植物。根っこは乾燥させ、冷え性や生理不順などの漢方薬になる。これも三国志に出てきたよね。曹操太史慈に送ったっていう(関係ない2)。

 

地黄
 植物の一種で、漢方薬でもある。貧血や虚弱体質の改善に用いられる。

 

枸杞
 枸杞の実。強壮薬として使われる漢方薬にもなる。

 

火鍋
 中国語で鍋料理という意味。

 

蟹と鹿肉
 漢方において、蟹は体の余分な熱をとってくれる作用があり、反対に鹿肉は体を温めるとされる。そのため皇太后は身重なうえに冷え性な皇后のために、蟹から鹿肉に変えたのでは。

 

血豆腐
 家畜の血液を塩で固めた食材。主に鍋の具材にされる。特に鹿の血は高価な漢方薬でもあり、古代の皇族や位の高い役人は健康に良い珍味として食していた。ただし妊婦は服用してはいけない漢方薬のひとつに分類されている。
 私も血豆腐は食べたことがないが、短期留学中に一度だけ校長先生に北京ダックのフルコース(超高級なので普通なら食べられない)を食べさせてもらった際に、鴨の血のスープをいただいたころがある。なかなか衝撃的な味だった……。中国では動物ならなんでも食べると言われるが、食べるからには余すことなく血はもちろん、水かきや肉球なども食べる。