瓔珞迷<エイラク・ミイ>

瓔珞<エイラク>ファンの自己満足メモです。

『瓔珞』第32話・舞に散りて

要点・見どころ

1.高貴妃の最期

あらすじ

前半・・・高貴妃は稽古場にやって来た乾隆帝と嫻妃に、先立って“万紫千紅”を披露する。夜空に飛び散る火花はそれは美しかった。しかし、強制的に危険な芸を仕込まれた芸人たちは、その恨みを晴らすべく溶けた鉄を高貴妃に浴びせかけた。乾隆帝は嫻妃が身を挺して守ったため無傷だったが、高貴妃は背中一面に大やけどを負ってしまう。宮中に高貴妃を狙う刺客がいると大騒ぎになり、捜査の手は辛者庫にも及ぶ。袁春望は瓔珞が仕組んだ策だと見抜き問い詰めるが、彼女はまだ体調が回復しておらず倒れてしまう。

後半・・・溶けた鉄には糞汁が混ざっており、高貴妃の傷口は化膿してしまう。絶対安静が必要だったが、高貴妃は治る気配がないと言って癇癪を起すため、葉天士すら治療を放棄してしまう。そこへ嫻妃が密かに訪れ、衰弱しきった高貴妃に残酷な告知をする。糞汁を混ぜたのは自分だと。そして、例え回復しても醜い傷跡は一生消えないと。死期を悟った高貴妃は、乾隆帝に最期の舞を披露する。ただの政治の駒として後宮に送り込まれ、愛されることなく散っていく自分の、最期の姿を永遠に記憶して欲しいと願いながら。

登場人物

魏瓔珞
 肥桶を洗っていたところ、突然侍衛たちが押しかけて捜索を始めたので驚く。海蘭察に事情を聞くと、騒ぎを大きくするだけだと注意した。その後、袁春望に芸人たちを救うために高貴妃を狙わせたのだろうと問い詰められるが、否定した。しかしおそらく彼の言う通り、昏睡した皇后を見舞わず縁が切れたと装った上に、儲秀宮に牛乳を運んでわざと高貴妃から虐げられて私怨を抱いたと周囲にアピールし、自分を盾にして長春宮に疑惑の目を向けさせないよう、周到に策を巡らせていた。そして、それは皇后の復讐だけでなく、亡くなった芸人の魂への弔いでもあった。ただそれを認めようとはせず、反論しようとしたが、いまだに体調が回復しておらず倒れてしまう。
 袁春望に粥を食べさせてもらい、お礼を伝えながら初めて彼を「兄さん」と呼んだ。

 

袁春望
 糞尿を運んでいた際、海蘭察たち侍衛に取り囲まれた。高貴妃を狙う刺客を捜索していることを知ると、瓔珞が芸人たちを救おうとしたのだと見抜き、問い詰めた。
 瓔珞が倒れると食事を用意して看病しながら、皇太后の誕辰のために血が流れた事実は隠蔽され、芸人たちも無事に解放されるだろうから安心するよう伝えた。そして、他人のことばかりではなく、自分自身のことも大切にするよう言い聞かせた。また、管事に昇格してもまだ満足していないと言い、必ず看病した見返りをするよう軽口を言った。

 

李玉・徳勝
 万紫千紅のあまりの美しさに、さすが高貴妃だと称賛しつつ、宮中で生き残るのは一筋縄ではいかないのだと話した。

 

海蘭察
 芸人たちが高貴妃目掛けて火花を放つと、侍衛たちを引き連れて芸人を捕らえた。乾隆帝の命令で刺客を探すため、袁春望が運んでいた糞尿の入った荷車の中を探したり、辛者庫にまで押しかけた。

 

葉天士
 大やけどを負った高貴妃の治療に当たろうとしたが、跡が残るからと薬を塗らせてくれないと乾隆帝に報告した。その後、乾隆帝の命令で強引に薬を塗ったが、その傷口から悪臭がすることに気づき、溶けた鉄の中に糞汁が混じっていたと見抜いた。なんとか懸命に治療するも高貴妃が癇癪を起すため、糞汁から感染した傷口の化膿が悪化し続けてしまい、もはやお手上げだと治療を放棄した。

 

嫻妃
 乾隆帝と万紫千紅の稽古を見ようとして高貴妃に嫌味を言われたが、穏やかな調子で対応した。実際に万紫千紅を見ると称賛しつつ、芸人たちの様子を観察し、鉄を高貴妃に浴びせようとするとすぐさま乾隆帝を身を挺して守った。背中に火傷を負うが、それによって今まで冷遇されていた乾隆帝から信頼を得た。
 芝蘭がいない隙を狙って儲秀宮を訪れ、高貴妃を見舞うと言って女官たちを退出させた。衰弱した高貴妃を寝台から引きずり下ろし、かつて虐げられた復讐のため、“何者か”の手ぬるい復讐に加担したのだと明かした。身を挺して守ったおかげですでに乾隆帝は自分の味方だし、たとえ体調が回復しても醜い傷口は一生残ると語って、もはや残された時間はないのでは?と、死に追い詰めた。

 

珍児
 嫻妃が乾隆帝を守って火傷を負ったことに対し、涙を流して心を痛めた。

 

高貴妃
 万紫千紅の稽古場にやってきた乾隆帝には猫なで声だったが、嫻妃に対しては露骨に嫌悪感をあらわにした。万紫千紅を絶賛されると得意げになり、本番ではこの火花の中で舞うのだと発案した。その舞台の位置を確かめるため前に出たところ、芸人たちに火花を浴びせられて背中一面に大やけどを負ってしまった。その痛みにつんざくような叫び声をあげながら、薬を塗ると醜い傷跡が残ってしまうと言って治療を拒否した。
 乾隆帝の命で強引に治療を受けさせられるも、一向に治る気配がなく、癇癪を起してそのまま失神してしまう。目を覚ますと嫻妃がいることに驚き、彼女にもう治らないのではと煽られると激怒したが、寝台から引きずり降ろされてしまう。一生消えない傷跡を背負い、乾隆帝に疎まれながら生きることになるだろうと告げられると、床に這いつくばったまま自分の死期を悟った。
 最期に乾隆帝に舞を披露し、その姿を永遠に心に刻んでくれと願った。力尽き乾隆帝に抱き留められると、その腕の中で、鄂爾泰派の要である父のせいで寵愛も受けられず、せめて警戒されないように愚鈍を演じてきたのだと、積年の思いをようやく言葉にして伝えた。そして、ずっと皇后になった暁に母を弔い、父親たちに報いることを夢見てきたが、もはや叶わないので最期に母の葬儀を執り行う許可を求めた。乾隆帝がそれを聞き入れると、大好きな京劇を演じながら自ら首をくくってこの世を去った。

 

芝蘭
 傷跡が残ってしまうと言って治療を受けようとしない高貴妃に同情し、最初は拒んだが乾隆帝に「死んでも良いのか」と言われ、ようやく高貴妃の手を押さえて強引に薬を塗ってもらった。
 その後、化膿が悪化し続け葉天士に余命宣告をされるとパニック状態になり、女官に高貴妃を託して葉天士の後を追った。その隙に嫻妃が儲秀宮にやってくると、とっさに身を隠したが急いで高貴妃の元へ戻った。納蘭のように今まで媚びを売ってきた者たちが次々と離れていくと高貴妃が言うと、しっかり養生して回復したら報いを受けさせればいいと励ました。しかし、湯あみと着替えをするというと素直に従い、乾隆帝に捧げる舞を涙を流しながら見守った。せめて兄の高恒に会ってくれとすがりついたが、そこでもまた素直に舞の準備を手伝い、主の最期の舞を見届けた。

 

高恒
 儲秀宮の門の前で跪き、高貴妃に面会を求めたが叶わず、芝蘭の叫び声を聞いて慌てて宮殿に入り、変わり果てた妹の姿を目の当たりにした。

 

乾隆帝
 嫻妃に対して挑発的な高貴妃に呆れ気味だったが、万紫千紅の美しさは褒め、その火花の中で舞を披露するという高貴妃の提案を「独特だ」と評価した。芸人たちが火花を浴びせかけようとすると、とっさに高貴妃を守ろうとしたが逆に嫻妃に守られた。高貴妃が治療を受けようとしないことを聞くと怒り、強引に手足を押さえつけて薬を塗らせた。その後、嫻妃のもとを訪れ、火傷が痛むはずなのに叫び声ひとつあげず、自分と高貴妃の心配をする彼女に感動し、これまで冷遇してきたが何年かぶりに名前で呼んだ。
 芝蘭の「最期に一目だけ」という訴えを聞き、仕方なく儲秀宮へ向かった。最初は疎まし気だったが、舞を舞う高貴妃の背中が血に染まるのをみると顔色を変えた。倒れこんだ高貴妃を抱き、愚鈍を演じていたことはわかっていたし、決して疎んではいなかったと告げた。彼女が母親の葬儀を最期の願いとして求めると、必ず執り行うと約束した。
 高貴妃の訃報を聞くとすぐに皇貴妃に昇格させる勅命を出し、葬儀の段取りを命令した。しかし動揺は激しく、その後は言葉を失った。



メモ

李白『秋浦の歌』
 李白は唐の時代の詩人。中国史上で杜甫と並ぶ最高の詩人と評される。『秋浦の歌』は、李白が秋浦(現在の安徽省にかつてあった地名)を訪れた際に詠んだ詩。全部で17首の詩があり、嫻妃が引用したのは“其十四”。

 

「人の将に死なんとする~」
 論語にある言葉。死に際の言葉は、かけひきがなく真実であるという意味。

 

追封
 死後に爵位を与えること。

 

高貴妃最期の舞
 おそらく『長生殿』の一幕では。楊貴妃安史の乱を引き起こしたとされ、玄宗皇帝から死を賜り、首を吊って自害する。ただ、歌劇はそこでは終わらず、玄宗皇帝と楊貴妃は月で再会を果たし、ふたりは永遠に寄り添い合って二度と別れることはなかった。高貴妃も月では高寧馨として陛下に再会できると良いね;;